小さな傷なのになぜ広範囲を塗るの?プロが教える「色」と「クリヤー」2つのぼかし技術

鈑金塗装

「たった数センチの傷を直すだけなのに、なぜパネル全体を塗る必要があるんですか?」

見積もりを見て驚かれるお客様から、よくいただく質問です。実は、プロが「パネル1枚」を推奨する背景には、**「色のぼかし」「クリヤーのぼかし」**という、全く役割の異なる2つの高度な技術が関係しています。

1. 「色のぼかし」:隣のパネルと馴染ませる技術

車の塗料は、同じカラーナンバーでも経年劣化や個体差によって微妙に色が異なります。 傷の部分だけを塗りつぶすと、そこだけが「浮いて」見えてしまうため、**「色のぼかし」**を行います。

  • 技術の目的: 塗装した部分と元の塗装の境界線を、グラデーション状に薄く飛ばして視覚的に馴染ませること。
  • なぜ広くなるのか: 違和感をなくすためには、傷の数倍の面積、場合によっては隣のパネルまで薄く色を飛ばす必要があります。これをしないと「いかにも直した跡」が残ってしまいます。

2. 「クリヤーのぼかし」:保護膜をどこで止めるかの決断

色を塗った後、最後に表面を保護し、光沢を出すのが「クリヤー(透明な層)」です。 実は、仕上がりの寿命を左右するのはこちらです。

  • プロのやり方: 基本的にはパネルの端から端まで(例えばドア1枚丸ごと)クリヤーを塗り切ります。
  • 「ボカシ際」のリスク: もしパネルの途中でクリヤーを止めると、その境目は極限まで薄くなります。塗りたては綺麗ですが、数年経つと紫外線や洗車でその境目が剥がれたり、白く粉を吹いたようになり、修理跡が丸出しになります。
  • バンパーなどの小傷であれば、あえて全体を塗らずに「プレスライン(折れ曲がった角の部分)」を利用してクリヤーを止める手法もあります。平滑な面でクリヤーをぼかすよりは補修跡が見えてしまうリスクを抑えることができます。

「安く済ませるために部分的に塗る」ことは可能ですが、それは「数年後の再補修リスク」を背負うことでもあるのです。

3. それでも「丸塗り」を推奨する理由

しかし、私たちは基本的には「パネル1枚丸ごと(丸塗り)」を推奨しています。 それは、どれだけプレスラインで隠したとしても、「ボカシ際の耐久性」だけは解決できないからです。

クリヤーをパネルの途中で止めると、その境目は極限まで薄くなります。塗りたては綺麗ですが、数年経つと…

  • 紫外線や洗車による摩擦で、境目がペリペリと剥がれてくる。
  • ワックスが境目に詰まって白く粉を吹き、修理跡が浮き出る。

こうしたトラブルのリスクをゼロにするには、パネルの端から端まで均一な厚みでクリヤーを塗り切る「丸塗り」が、長期的な視点で最もコストパフォーマンスが高いと言えます。

まとめ:愛車の価値をどう守るか

部分的な補修で一時的に安く済ませるか、パネル塗装で「5年後、10年後も修理したことがわからない状態」を維持するか。

私たちプロが全体塗装を提案するのは、お客様の大切な愛車を長く、最高の状態で維持してほしいという想いがあるからなのです。

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